第五話 緊急脱出!!!
メラメラ、メラメラ。
目が覚めた。一度寝たら八時間は目を覚まさないというこの俺が!?
一体どうしたわけか……。
うーん、なんか体が異常に熱い……? 季節は夏だし、夜も半袖くらいがちょうどいいと思っていたが、これはいくらなんでも熱すぎる。サウナかな?
メラメラ、メラメラ。
メラメラってなに? ん、少し煙い気がする。それに、なんか部屋明るくないか?
寝返りを打ってみると……
なんと、壁から燃え上がる炎!!! こちらに火が広がってきているではないか!!!
「うおっ!!!」
俺は跳ね起きて、火の元から離れた。枕替わりにしていた服で、火が広がらないようにバサバサと仰ぐ。
やばい、どうしよう。どうしてこうなったんだ。
消火はどうやら無理そうだ。もう火が小屋の半分以上に広がっている。
一刻も早くここから脱出しなければ。侵入するためにガラスを割った窓の元へ急げ!
窓の周りにも若干火が回っているが、家から出るにはこの窓を使うしかない。
熱い! 熱い熱い熱い! 早く、早くここから出るんだ!
枕用の服で火を払いながら進む。両腕に並々ならない感覚が走る。
熱いのを必死に我慢して、何とか窓までたどり着いた!
窓枠に足をかけて、勢いよく飛び出す!
「ふっ!!!」
トサッ。着地成功。すぐさま家から離れる。
ふう、危ないところだった。マジで死ぬかと思った。
痛ぇー痛ぇよ。両腕がいまだに燃えているような感覚がある。重症というわけではないが、決して軽くもなさそうだ。火傷した経験がないので今までわからなかったが、これは相当辛い部類の怪我だ。
それにしても、どうしてこんなことになった。深夜に小屋が自動的に発火するなんてことがあるのか。
いやいや、さすがに自然発火は考えにくい。何せ周りは住宅街だからな。
薬品とか危険物取り扱ってる施設ならありうるかもしれないが。あと、落雷とかね。まあ、落雷の場合は音で速攻気づくだろうけど。
って、今はそんなこと考えてる場合じゃない。痛い。火傷した患部をはやく冷やさないと。水、水はどこだ。
どうやらすぐ近くにはなさそうだ。もうここから離れなくてはならないな。
激しく燃える宿をもう一度眺める。もう全体に火が回ってしまっているため、全焼は免れないだろう。ああ、なんということだ。
初夜をともに過ごしたことは一生忘れないぞ。ありがとな。
メラメラ、バキバキバキッ!
火傷の痛みと別れの辛さを噛みしめながら、崩れ行く家を後にした。
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