第四話 No Money, No Life
「Please get up.」
ん。なんだもう朝か。ああよく寝た。
「Please get up. It's closing time.」
ん、英語? なんて言った? …………あっそうだ、ここ市立図書館の中だった。実家のベッドだと思ってたわ。
頭が覚醒して視界が明瞭になった。
おや、目の前に若い女性が立っているぞ。俺を起こしてくれたんだな。このベッド寝心地いいから、気緩んじゃって、すごい顔してたかもしれない。ちょっと恥ずかしい。
「Ah, you woke up. It's time to close. 」
えーっと、なんだって……ウォークアップは「起きましたね」だろ。タイム・トゥ・クロース。クロースは閉めるだから、ああ、そっか「閉館時間になりました」って感じか。 なんかだんだん英語に慣れてきたぞ。
「OK.」
とりあえず図書館から出ないといけない。起き上がって、背伸びをしてと。ふぅ。
よし、行こう。
「Thank you for using the city central liblary. We look forward to serving you again.」
お、サンキューって言われた。なんか感謝されるようなことしたっけ。図書館入ってから閉館時間までずっと寝てたけど……?
ま、いいか。感謝されて悪い気はしないからな。そんじゃ、行きますか。
ガチャ。
図書館の扉を開いて、外に出た。
おー、もう夕方じゃないか。日の傾き的に午後五時前後といったところか。何時間寝てたか確認してなかったけど、感覚的に三時間以上は寝てたと思う。
さて、これからどうしようか。もう暗くなるし、お腹も減ってきた。
だけどなー、俺一文無しなんだよなー。お金がないから何もできないんだよなー。
町を少しだけ探索して、食料を見つけられればいいが、何もなかったらまあ夕飯は抜きでも問題はない。ここら周辺はまだよく探索できてないからいろいろ見てまわろう。
数十分後。
はあ、だめだ。日が暮れるまで探しまわったが、食料確保できる場所は見つからなかった。くまなく探したというのに、スーパーやコンビニを一つも発見できなかった。
この町は思っていたより広く、まだほんの一部しか探せていないのが現状だ。もう少し探索区域を広げていけば、いずれ何かしら食料調達できる場所を見つけられるはず。
すで辺りは暗くなっていて、今は街灯を頼りに歩いている。
もう食料は諦めて、今日の宿探しをしよう。
お金があったら、ホテルとか旅館とかに泊まれるんだけどなあ。何せ一文無しだからな。質の高い場所に泊まるのは夢物語だ。
見知らぬ人の家に泊めてもらうという選択肢もあるが、俺の経験上成功した覚えがないから、ちょっと腰が引ける。大抵強く拒絶されて、戸を閉められてはい終わりだ。
もうこうなったら野宿するしかないのだが、なんの警戒もせずに外で寝ようものなら、災害にあうなり事故にあうなりと、ろくなことにならないだろう。盗難の心配はないけど……。
それと、雨が降ってきたら寝るどころじゃない。
屋根のある場所がいいよな。ついでに言えば周りが囲まれている場所。
空き家とかが一番理想的かな。今にも崩れそうとかじゃなければ、結構快適に寝れるんじゃないだろうか。
よし、そうしよう。不法侵入だとかそういうことは言ってる場合じゃない。
庭の手入れのされていない、いかにも人がいなさそう建物を探していこう。
それから数十分後。
おお、なんかそれっぽい建物を発見したぞ! かなり小規模の一階建ての建物だ。
壁が若干黒ずんでいて、ツタが申し訳程度に家を囲んでいる。放置状態になってからそれほど時間は経っていないのかもしれない。
ぐるっと回ってみたが、瓦屋根はどこも損傷がないようだ。これで雨漏りの心配もないな。
それじゃ家の中に侵入しますか。……って言っても玄関の扉はさすがに閉まってるよな。じゃあ、裏口とか窓とかから侵入するしかないな。
……だめだこれ。全部鍵がかかってる。どうしても入れない。
別の物件を探しにいくか……。いや、この後空き家を発見できるかどうかは確実じゃない。できない可能性の方が高い気がする。できればここに泊まりたい。
しばし長考した結果……、うん、ここに寝ることに決めた!
というわけで、この家の窓ガラスを割って入ろうと思います。
辺りに人はいないか……よし、大丈夫そうだ。
「うおー!」
バリーン!!!
渾身の力で窓を蹴破った!
よし、ここから侵入だ。ガラスの破片が散らばってるから、慎重に入りましょう。
ストッ!
家の中はどうなっているかな? 月明かりを頼りに部屋内を見回すと……
見事に何もない。家具の一つもない。
くそーベッドあるかなって少し期待してたんだけどな。まあ『No future』モードの人生に、そんな幸運があるはずもないか。
なんかもう疲れたし、床をきれいにしたらもう寝よう。
服を一枚脱いで、雑巾代わりにしよう。ふう、熱かったからちょうどいいや。
ゴシゴシ。とりあえず横になる場所だけ適当に拭いておけば問題ないよな。
よしっと。暗くてきれいになったかどうかほとんどわからないが、まあこれで十分だろ。
「ふぁー」
ああ、眠くなってきた。飯を食っていないから、体力がすぐになくなってしまった。
雑巾を丸めて枕にしてっと。では、おやすみなさい。
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お読みいただきありがとうございました。