第二話 始まりの町は災難だらけ
[始まりの町に到着しました]
お、結構早かったな。一回まばたきしただけで、もう始まりの町に着いた。
それはそうとして、ここが始まりの町か。それじゃ、見て回ろう。
俺は今、どうやら道路の真ん中に立っているようだ。道路の真ん中。
ブーブー!!!
うわっ、後ろから車が来た! 歩道に避けないと!
シューン……。
ふう、危なかった。さっそくフラグ回収しておさらばするところだったが、なんとか切り抜けることができたな。えらいぞ俺。
それじゃ仕切り直して、町の探索といこう。
まず、俺がスポーンした場所は広い道路だ。歩道には等間隔で木々が青々と生い茂っている。なかなか見ごたえのある並木道だ。
はあ、スポーンしたのが夏で良かった。極寒の地にスポーンして速攻凍死するとか笑えないよね。
とりあえず、この並木道を進んでいくことにしよう。
お、家が沢山建っている。住宅街があるのか。
車の数も増えてきた。だんだん都会らしくなってきたぞ。
そろそろ第一村人、いや、第一町人と遭遇してもおかしくないな。
タッタッタッタッ!
お、ついに来た。こっちに向かって走ってくる人が一人! 若い金髪の女性だ!
「Excuse me, I'm afraid to be lost.」
ん、英語!? ちょっと待って無理なんだが……。ここは回避しよう!
ダッと反対方向に駆けだそうとするが、
「Ah, just a moment please!」
と腕をつかまれた。これはもう逃げれないやつだ……。
「Could you tell me the way to the city library?」
なんて言った? テウミー……ウェイ……シティーライブラリー……。
テウミー……あ、教えてくださいか。
ウェイは道だよな。
シティーライブラリーは、そうだ、市立図書館だな。
つまり要約して、「市立図書館への道を教えてください」だな。
いや、無理だろ。今この町に来たばっかりだし。
えっーと、「今町に来たところです」はなんて言えばいいんだ……?
アイ・ケィム・ヒア・ナウでいいのか。……うん、わからないけど、他に思いつかないからこれでいいか。
「 I came here now.」
「Oh, I see. I'm sorry to interrupt you.」
ん、なんだ開放されたぞ。よくわからなかったけど、謝ってたっぽいな。
どうやら主旨が伝わったようで良かった。
ふぅ、急に英語で話しかけられるとか、マジで勘弁してほしい。このRPGほんとに難易度高すぎだろ。
なんか一息吐きたくなってきた。ちょっと休憩できる場所を探そう。
お金は持ってないから、飲食店は無理。となれば公共スペースか休憩所。まあ、公園のベンチとかでもいいんだけど。
おっ! 公園発見! こじんまりとして趣があるな。
ベンチベンチ……おお、あったあった。大人が三人くらい座れる大きさで、背もたれのあるベンチだ。
よし、ちょっとこのベンチに座って休憩しよう。
ドッとベンチに腰掛けると
バキッ!!!!
「うおっ!」
ベンチが嫌な音を立てながら崩れ去った。俺は腰かけた勢いで後ろにすっとんだ。
ドスッ。左肩を思いっきり強打した。
「痛ぇー……」
右手を左肩に回す。ちょー痛い。ずきずきする。
ベンチぶっ壊れるとかおかしいだろ普通。
体をよじりながらなんとか起き上がる。くぅ、痛すぎる。脱臼はしてないと思うけど、これ内出血は確定だわ。
くっそー、なんでだ。どうしてベンチ壊れた。ベンチに細工でもしてあったか。
ベンチに近づいて、折れた足の部分を確認する。
コンコン。ベンチの足は金属でできているようだ。折れた部分は……ん、なんか破断部の周りだけ不自然に細いな。なんか微妙に溶けたような跡がある。
誰かベンチに細工したってことだな。でも公園のベンチに細工するって、どういう意図があるんだ。
まさか理不尽にこういうことがありうるゲームでなわけよな。……いや、なんかそれもありそうで怖くなってきた。
タッタッタッタ!
足音が遠ざかっていくのが聞こえる。まさか、犯人か?
「Hey, wait! You are not allowed to take the reagent out !」
肩を押さえながら公園を出ると、少し遠くに子どもが女性に追いかけられているのが見えた。
目を凝らすと、子どもは白い容器を抱えている。あの子が犯人だろうか。
彼らを追いかけようかと思ったが、さっき肩を含め左上半身を強打したダメージが大きく、走れそうにない。
一刻も早く休憩できる場所を見つけなければ。公共施設を探そう。
俺は重い足取りで公園を後にした。
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